矯正治療のリスク・副作用

治療開始までに知っておいていただきたいこと

矯正治療を行う際,歯を動かす際に痛みがあったり,むし歯になりやすかったりします.矯正治療を行う際のリスク・副作用について説明します.

痛み

矯正装置を装着または調整後しばらくの間「痛み」が出ます.それでも,学校へも行けますし,仕事もできます.痛みは,特にものを咬んだとき(お食事中)に感じます.ピークは2-3日,完全に痛みがなくなるのは5-7日程度です.初回装置を装着した際には特に痛みが大きく,2回目以降は程度が軽くなります.

プラークコントロール

矯正装置をつけることによりむし歯のリスクが高まります.検査2回目に種々口腔ケア用品について歯科衛生士より説明します.むし歯の抑制に最も効果が高いのはフッ化物(いわゆるフッ素)とされていますのでその使用についてしっかり説明します.もちろん、日々のブラッシングも重要です.

また,定期的な来院の際には歯科衛生士が歯石除去・歯垢除去を行います.

急患

装置の脱離やワイヤーの飛び出しにより定期的な通院の他に臨時の受診(急患)が必要となることがあります.電話連絡をいただき,装置再装着・ワイヤー再調整など対処いたします.

歯根吸収

矯正治療(特にマルチブラケット治療)後に歯根がやや丸くなる現象で,歯根吸収と呼ばれます.ほとんどの場合問題にはなりません.大きな上顎前突,外科併用矯正,すでに吸収のある歯,打撲したことのある歯,成人矯正の場合などやや高い確率で歯根吸収が起こります,混合歯列期の治療では歯根吸収はあまり起こりませんが,初診時から歯根吸収がある場合にはそれが進行します.弱い力で歯を動かした方が吸収は起こりにくいとされていますので,慎重に力の調節をします.ただし,患者さんの生まれ持った体質の影響もあるとされています.

(Root resorption associated with orthodontic tooth movement: a systematic review. AJODO 2010;137:462-76.)

(A heritable component for external apical root resorption in patients treated orthodontically. AJODO 111;1997:301-9.
Genetic and clinical risk factors of root resorption associated with orthodontic treatment. AJODO 2016;150:283-9.)

骨性癒着

打撲したことのある歯,低い位置にある歯,その他不明の要因により,歯と骨が直接ついてしまっている状態を「骨性癒着」と呼びます.そのような歯は矯正の力を加えても動きません.試しにその歯を動かしてみたりし,動かないと判断した場合には癒着している歯を抜歯の対象とすることがあります.不明の要因の場合,治療開始後に癒着が判明し治療方針を変更することがあります.

(Incidence of dental trauma associated with facial trauma in Brazil: a 1-year evaluation. Dent Traumatol 2004;20:6-11.)

後戻り (治療後の咬み合わせの変化 )

矯正治療で一度並べられた歯は骨格の変化(成人後数十年の単位で見ると顔の高さが小さくなる)などにより治療後も並びが変化します.10年単位で見られる歯並びの変化は、下顎前歯にガタガタがでてくることです※1.保定期間は一般に2年間程度としている場合が多いようです※2,

(※1 Mandibular incisor alignment in untreated subjects compared with long-term changes after orthodontictreatment with or without retainers. AJODO 2019;155:234-42.)
(※2 歯科矯正学第6版,第19章保定 P.332 2019 医歯薬出版)

転医

矯正治療中に転居などにより他の矯正歯科にて継続診療を行うことを「転医」と呼びます.当クリニックでは,お父様の転勤に伴うものなどの他は極力転医は避けるようにしています.例えば,進学などで水戸から東京に移動することが判明している場合などは,治療を進学まで待ち東京の矯正歯科で治療を開始するか,進学後も東京から通院いただくか治療開始前に選択いただくようにしています.やむを得ず転医が必要となった場合には,治療の進行状況により割合を算出し返金いたします.転医した場合,転医先で再検査が必要となり検査料がかかる,検査・計画作成のため治療期間が延びるなどのデメリットがあります.お父様のお仕事でいつ転勤があるかわからない場合,ご本人が比較的移動しない高校の3年間で仕上げのマルチブラケット治療を行うことをお勧めします.

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